不定期連載 bikke's essay 第2回

そこに行くのだ

sora

「あの世指数が高い」と評されたことがあります。
それはたぶんそう言った友達の造語なのでしょうけれど、
その表現に感嘆したことを覚えています。

私は子供の頃から、あの茜雲の上でぴょんぴょん跳ねて
暮らしたいと思っていたものですから、いつも夕空を
見上げていました。

その昔ロンボク島で、まさに「天国を仰ぐ島」に来たと感激して、
夕暮れ近い大空をずうううっと見上げていました。

先日原くんが(原マスミ)「俺は夜が好きなんだ」と言っていましたが、
私は夜は怖くて、夕暮れの時間ではなく、夕暮れの空が好きです。
その彼方に行けば、幸せな暮らしがあるみたいに思って来たのだと
自分では理解しています。天竺というコトか知らん?

大切な友達がその夕空の向こうに何人も住んでいて、私はいつの日か
会えるのだと思うと、あまり死はこわくなくなりました。
もう二親ともいませんし、お迎えの日が来たら、喜んで行けるような
気がしています。

篠田昌已くんが亡くなったとき、彼は数えで34さいだったように
記憶しています。まだラブジョイではなかった頃、篠田くんがサックスを
吹いてくれた一度きりのライブを今でも皆で大切にいだいています。
夕暮れの音のサックスでした。曲に夕暮れのオレンジ色が重なって、
何処までも、何処までも続き、それはもう終わらないような音楽でした。

切石智子が亡くなったのも34さいでした。それは満34さいだったかな。
イラストレーター、音楽評論家、切り絵師、キューバ音楽の伝道者、ダンサー、
切石はあらゆることに才能を発揮した人です。

長い長い友達で、私のアーントサリー以降の音楽を最初に評価して
くれた一人です。山本精一くんと共に、難波ベアーズに誘ってくれ、
それからは色んなことがありました。ミュージックマガジンにライブ評を
書いてくれたこと、チラシを作ってくれたこと、ラブジョイのメンバーとも
仲良しでした。 山本くん評するところのラテン系だったので、
キューバ仕込みのダンスをライブで踊ってたことや、もうしょっちゅう
「切石はびっけちゃんの音楽が好きじゃ~~」と真夜中に電話くれたり、
「えええ~切石、もう2時やでー。うんうん、わかったからもうええて」
もうれつに面白いやつでした。けったいな美人でした。

切石のいないショックから立ち直れたのは、だいちゃん(近藤達郎)
がそのままの気持ちを書いたらいいんだよ、と言ってくれ、
「そこに行くのだ」を作ることが出来たのがきっかけです。
だいちゃんの曲は素晴らしく、ラブジョイの次の扉も開いたと私は思っています。

去年の11月、チャイナ(西浦真奈)がフィラデルフィアで交通事故に遭い、
とつぜん逝ってしまいました。チャイナも34さいでした。
チャイナとはその年のまだ早い春に出会ったばかりでした。

JB(渕上純子とbikke)と羅針盤の対バンで出会い、
チャイナはそのときのJBの演奏に魂を奪われたように感激してくれ、
一気に友達になったのでした。東京でのライブに1曲ドラムを叩きに来てくれ、
さかなのポコペンと渕上と4人でギャルバンするか!と楽屋で話しました。
ギャルバンて、、、。

チャイナのくれたメールはどれほど彼女が優しい人だったかを語り、
いまさらに抱きしめて泣けてきます。私は短い友達でしたが、
生涯忘れ得ないものを貰いました。

折りにふれ、彼等に話しかけるくせがついています。
とても大切な人を失ったとき、もう立ち上がれないような気持ちに
何度もなりましたが、それでも私は食べたり笑ったり、自分の生活を
続けて来ています。

母が死に間際に、友達の加藤わこの生まれたばかりの子供、
和太郎を見せにICUへ行きました。
わこが「おかあさん、わたろうです。私の子供です」と
和太郎を持ち上げて見せると、我が母は言いました、
「わたろうちゃん、橋わたろう」。 

苦しい息のなか、何故こんなことが言える!?と我が母親ながら
「何でおもろいねん!」と、あっぱれでした。

私はそのときが来たら、もう意気揚々と夕空の彼方の国に行こうと思います。
そこには、あったかい人達が待っててくれるのですから、なんだか楽しみでも
あります。けれどもまだ、ここでしなくちゃいけないこと、したいことがある
ので、それは一生懸命にやっていこうと思います。

もう46さい「いつか五十路の声を聞き~♪」と歌った私は、
「この歌は俺の歌だよ~」と言ってくれる盟友原マスミくんと同じく、
デッカいこともやり遂げず、まこんなもんだとワクワクした気持ちで
思っています。だって、これからも人生は続き、老い、それでも生き、
おもろいことを言いながら、デイケアで「このばーさん、自分がロック
してたてゆうとりまっせ」とか言われて、そんなこんなの全部を受け入れて、
世の中には何事もなかったかのように消えていくのがイイ!と思うのです。
そしてまた世界は続いていく。